アメリカでSPAC(買収目的会社)を使ったIPO(新規上場)がブームになっています。
2010年台は普通の審査を通過したIPOが大半でしたが、2021年になって新規上場の80%以上がSPACを通じて上場しています。
人気の高まりの一方で、投資詐欺では?といった怪しい声も聞こえてきます。
そこで、今回はSPACについて詳細解説するとともに、日本の証券会社で買えるの?という投資家全員の欲望についても調べてみました。
SPACとは?
SPACとは企業の買収を目的にした会社を指します。
近年、アメリカではIPO(新規上場)の受け皿としてのSPACが乱立していまs。
SPACなんて事業の実態がない企業に対して、なぜ資金が集まるか?
それは正規ルートのIPOで求められる面倒な承認プロセスをすっ飛ばして上場できるため、上場で資本市場から調達したい企業にとって魅力があるからです。
また投資家サイドとしては、新規上場プレミアムを求める強欲なお金が集まるのです。
SPACって、どう読むの?
SPACはSpecial Purpose Acquisition Companyの略で、通称スパックと呼びます。
日本語に翻訳すると、特別買収目的会社を意味します。
SPACの仕組み
SPAC自体は特定の事業を持たず、事業実態のある未公開会社を買収することを目的に運営されています。
下図のような流れで事業会社を吸収合併することで、上場を完成させます。
- SPAC設立後にIPOによって投資家から資金を集める
- 集めたお金を使って特定の非上場企業を買収する
- 合併後の新会社が誕生し、実質的にIPOの審査無しで未公開企業を上場させる
従来のIPOとSPACによるIPOの違い
従来のIPOは厳格な審査を通過して上場を許可され、資金調達できるものでした。
一方で事業実態のない身軽な企業が審査対象となるSPACは簡素な手続きで上場できます。
被買収企業から見れば、審査なしで上場を果たすことができるのです。
従来のIPOとSPACのIPOの主な違い
従来のIPO | SPACのIPO | |
---|---|---|
上場に要する期間 | 長い | 短い |
審査の難易度 | 難しい | 簡単 |
SPACを利用したIPOが爆発的に成長中!
審査の簡便さに加えて、新型コロナ対策の1つである金融緩和で世界的に金余りな状況になったことで、SPACによるIPOが急成長しています。
グラフを見ると、2017~2019年はSPACを使ったIPOは全体のごく一部に過ぎませんでした。
しかし2020年には約半分のIPOがSPACによるもので、2021年にいたっては80%以上をSPACが占めるほどの活況ぶりです。
SPACのメリットとデメリット
SPACがこれほどまでに盛り上がるのには、相応のメリットがあるに違いないのでしょう。
そこでメリットを詳しく調べてみました!
SPACのメリット1 少額で未公開株式に投資できる!
特別買収目的会社(SPAC)のおかげで、投資家はSPACに少額資金で未公開株式に参加できます。
未公開株式は1口あたりの金額が高額になることが多く、機関投資家や富裕層など限られた投資家しか利用できませんでした。
つまり個人投資家にはハードルの高い投資商品だったわけです。
一方で上場企業であるSPACを仲介することで、誰でも参加できるマーケット内で少額から投資できます。
SPACのメリット2 買収の途中でも売却できる
未公開株の最大のデメリットは、いったん投資したらその株式を売ることができない点があげられます。
なぜなら未公開であるために、その株を売るオープンなマーケットが存在しないからです。
一方でSPACは既に上場しているのでいつでも売却することができます。
本来の目的である買収が達成される前に、「イチ抜けた!」が気軽にできます。
メリット3 投資家保護の規定による投資元本の安全性
SPACには必ず買収期限や信託など投資家保護のルールがあります。
もしSPACが未公開企業の買収に失敗したとしても、投資資金の多くが投資家に返還されます。
あくまでSPACがルールを守ることが前提ですが、投資したお金を回収できる可能性が高くなるなんて素敵ですね。
メリット4 一般の未公開株よりも投資回収期間が短い
従来の未公開株は、上場やM & Aといった成功の出口(イグジット)に到達するまで5年から10年はかかります。
一方SPACは買収完了までの期間が最長2年までに定められており、短い期間で投資資金の回収がしやすくなっています。
流動性リスクが低いというのは、変化の激しい世の中を考えると大きなメリットですね。
メリット5 企業は楽にIPOを達成できる
従来のIPOでは上場の審査条件が厳しかったり、審査期間が数か月~年単位でかかるなど、特に資金調達が急務なスタートアップ企業に立ちはだかる障壁が数多くありました。
2020年を思い返すと、新型コロナの蔓延によって株式市場が荒れたことで、予定していたIPOのキャンセルが相次ぐ時期がありました。
まさに上場審査の厳しさや期間が長いことの弊害が浮き彫りになりました。
SPACに買収される企業から見れば、IPOのプロセスを短期間で簡便に終えることができ、市場から自由に資金調達ができるようになるので、喜んで買収を受け入れる企業が増えてきています。
ここまで見てきたように、参加のハードルが低くて投資家保護のルールがあって企業サイドから見ても無駄に厳しく時間のかかる審査が不要ということで、良いことづくめのように見えますね。
本当にメリットだらけでしょうか?
調査を進めると、やはり世の中そんな美味い話は転がってないということで、SPACによるIPOのデメリットや悪い評判もあるようです。
デメリット1 高値買いのリスク
投資家保護のために、SPACは最長2年以内に買収を完了しなければならないルールがあると説明しました。
2年というのは買収の複雑な手続きを考慮するとタイトなスケジュールです。
そのため締め切りに焦るあまりに高値で企業を買収してしまい、投資家の利益が少なくなる、あるいは損失が出てしまうリスクがあります。
デメリット2 買収した企業が詐欺の可能性
従来のIPOであれば、厳しい審査の中で過去の決算や今後の事業計画がチェックされ、株式市場でお金を集めて問題ない企業であることが確認できてます。
ゆくゆくはダメになる会社はあるものの、上場前に一定のお墨付きを得ているので、上場後すぐに詐欺まがいの会社が判明するケースはあまり見かけません。
しかしSPACでIPO審査されるのは、事業のない空箱の会社です。
上場後に買収する企業=本当の事業となりますが、買収企業にはチェックが行われないため、詐欺的な会社が混じるリスクがあります。
SPAC詐欺?2020年 二コラ・ショックが発生!
現代の自動車産業で最も高く評価されている会社と言えば、イーロン・マスク氏が率いる電気自動車のテスラですよね。
そしてテスラの次に期待され、電気に加えて水素にも手を広げて徹底的に環境に優しい未来のトラックを作るスタートアップがあります。
会社名は二コラ。
まるで高級車のような外観をしたデザイン性の高いトラック車体で、最高にエコであるということで、Nextテスラとして自動車業界を席巻すると言われていました。
その二コラが2020年6月にSPACに買収されることでアメリカ株式市場に上場し、株価はあっという間に10ドル → 70ドル台と7倍以上に急上昇しました。
まだ1台も売ってない自動車メーカーが時価総額:3兆円を超えるまでに膨らんだのです。
しかし事件は上場から間もなく発生します。
アメリカの調査会社:ヒンデンブルグ・リサーチが、内部情報のリークをキャッチし、レポートとして公開しました。
そのレポートによると水素で動くトラックはできておらず、デモンストレーション映像も坂道の動力を使ったイカサマだったというのです。
水素以外外にも二コラ社の表明は嘘が多く、虚偽広告の詐欺容疑によって創業者のトレバー・ミルトン氏は辞任に追い込まれました。
二コラ社の株価は昨年高値の4分の1以下と急落の一途をたどっています。(2021年3月時点)
日本でSPACによるIPOは?
二コラのような暴落リスクはあるものの、投資家としてはチャレンジしてみたいと思うのが正直なところです。
日本におけるSPACの事情を調べてみました。
日本にSPAC銘柄はある?
2021年3月時点では日本の中でSPACによる上場は認められていません。
2008年頃にSPACの上場解禁について検討されたことがありましたが、当時は課題が多く見送られました。
その後もベーンチャー界隈を中心に多様な資金調達を求める声は強く、投資家保護や最低限のチェックなどの課題をが解決されれば、いずれは可能になるかもしれません。
アメリカのSPACを日本のネット証券で買える?
ざっと調べたところ、SBI証券やマネックス証券でアメリカのSPACを購入できそうです。
ぜひ筆者自身も購入してみて、その体験談や投資実績をこのブログで公開していきたいと思います!
以上、本日はここまで。
今回は何年間も連続で配当を増やす米国株について書きました。
それでは!
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