株価が上昇し続けています。
新型コロナ感染症が拡大するなか、景気の落ち込みを支えるために大規模な金融緩和が行われた結果、余ったお金が株式市場に流れ込んでいます。
これはバブルではないか? 今後、株式を含む投資市場はどうなるのか?
疑問へのヒントを得るため、世界三大投資家と称されるジム・ロジャーズの最新本「大転換の時代」を読みましたので、その内容や筆者の独自見解も書きたいと思います。
大転換の時代 世界的投資家が予言(Amazonのページが開きます)
コロナ後のバブルは崩壊するか?
多くの個人事業主や企業が破綻するだろう
ロジャーズによると、国や企業の借金が膨れ上がりまくった結果、近いうちにそのツケによって災難が訪れるということが語られています。
リーマンショック以上の未曽有の大恐慌が起きると言及しているのです。
実際、どれだけ国の借金が増えているかというと・・・
FRBのバランスシートとダウ株価指数の関係
青いバーがアメリカ中央銀行の借金のふくらみで、折れ線がダウ株価指数を表してます。
2020年春先からのコロナ対応の結果、ものすごい勢いで借金が増えていることがわかります。
生活に苦しむ人にお金が回る分はいいのですが、裕福な人にも回っていくため、ますます資産バブルの発生が懸念されるわけです。
インフレは起きるか?
短期的にデフレが起きた後、いずれは需要が増加してインフレに転じるだろう
インフレの前に短期的なデフレが訪れるとロジャーズは予想しています。
なぜなら上で言及したリーマンショック以上の大恐慌が起き、物やサービスが売れない状態になり、生死をかけた価格競争が行われるためです。
企業の倒産が相次いだ結果、需要と供給のバランスが少しずつよくなっていきます。
その先で景気が回復すれば、インフレに転じるだろうと予想しています。
MMT(現代貨幣理論)は世界経済を破綻させるか?
MMT事態が破綻させるわけではないが、MMTは何も解決しない
MMTをざっくり説明すると、インフレさえ起きなければ国はいくらでもお金の供給量を増やして構わないので、金を刷りまくって景気を刺激すればよいといった理論です。
上記MMTの図の通り、政府は国債を中央銀行に引き受けてもらうことで資金調達を行い、企業や公共事業にお金をバラまくことで、景気をよくしようと試みます。
リーマンショック以降、各国政府は景気が落ち込むたびに金融緩和で大量の紙幣を刷ってきました。
しかしロジャーズ氏はMMT理論を真っ向から否定します。
不景気とはお金が解決するのでなく、金を使って人・物・サービスを生み出すことで打ち勝つものだと持論を述べています。
しかも今回は金融危機ではなく、伝染病が発端であることも考慮すると、金融緩和が根本的な解決策であるはずかなく、代わりに「何もしない」ことを提言しています。
ハグも握手もしない、おとなしく過ごすことが一番の解決策だと考えているようです。
コロナショックで変わったジム・ロジャーズのポートフォリオ
危機下で投資する際、どのセクターや会社が回復するか見極めることが重要
株価の急落相場では、うまく売買を行えば大きな利益を得ることができます。
ジムロジャーズ氏も積極的に動いたようで、航空会社・空港運営会社・ワイン会社・運送会社を買い込んだと述べています。
非常に驚かされたのは航空会社と空港運営会社に対する投資です。
コロナ禍で最もくるしいとされる航空関連に投資するとは、さすがは世界の三大投資家だけあって、常人には全く理解できません。
下図の通り、ダウ平均株価は金融緩和の甲斐もあってコロナ前よりも高値で取引されています。
一方でアメリカの空を代表するアメリカン航空の株価を見ると、コロナ前の半分の値段で低空飛行を続けています。
アメリカの株は買いか?
最高値を更新し続けているアメリカ株は高すぎで、買うべきでない
ロジャーズ氏は、アメリカの株価に対して悲観的な見解をもっています。
なぜなら歴史上最も高値の水準にあり、割高と判断しているようです。
またFRB(アメリカの中央銀行)は金融緩和で紙幣は刷っても、自国の株式を決して購入しません。
一方で日本のように中央銀行が自国株を買う国があるので、どうせ投資するなら政府の後押しを受けられる株式市場のほうが魅力を感じているようです。
ヨーロッパ、中国、日本の株は買いか?
中国と日本の株式は買いで、ヨーロッパは買わない
中国と日本は、アメリカ株と違って過去の最高値に比べてかなり下回っていて上昇余地があるため、購入すると述べています。
一方でヨーロッパはEUが経済発展の足かせになるため、株価も伸びず、買わないという見解を持っているようです。
イギリスのEU脱退以降、いくつかの国ではEU残留派と脱退派の分断が起きていて、政治的にもかなり不安定になっているため、それが解決されないと投資しないようです。
有事の金や銀は今後も買いか?
金、銀は全ての投資家が買うべきで、今後も同じだ
ジムロジャーズ氏の金(ゴールド)好きは非常に有名で、彼のインタビュー記事には必ずおすすめ投資先として登場します。
金や銀で作られた貴金属の美しさは誰もが認めるところで、なくなることはありません。
算出できる量には限界があるため、長期的には価値も上昇を続けると予想しているようです。
気候変動が続くなら買うべき投資商品とは?
気候変動が続くか否か分からないが、続くほうに賭けるなら米、小麦、トウモロコシを買うべきだ
気候変動が続いていて、観測史上初の●●といった自然災害ニュースが毎年のように聞かれるようになりました。
気候が大きく変わると農作物の不作につながるリスクが拡大し、「需要>供給」の作用によって価格の上昇をもたらします。
一般消費者から見れば、食料価格の上昇と聞くと頭の痛い悩みですが、金融商品としては逆にプラスの要因をもたらしてくれます。
食料の必要量は人口に比例するため、世界の人口が増え続ける現代を踏まえれば、今後も価格が上昇すると考えるのが普通です。
ロジャーズ氏がは、小麦・トウモロコシといった主食として消費される食料を特におすすめしています。
下図は農林水産省による2020年10月時点のレポートです
(引用:農林水産省 「我が国における穀物等の輸入の現状」)
図の右側の通りコロナ禍の影響でいったん下落したものの、徐々に価格が上昇傾向にあることがわかります。
しかし俯瞰してみると小麦・トウモロコシはここ5年ほど安定した価格で推移しており、どちらかと言えば下落基調にあるため、ロジャーズ氏が言うようにこれらの価格が上がるか?は疑問が残ります。
GAFAは今後も投資先として有望か?
モメンタム株を保有することはリスクが高いため、GAFAを買わない
もちろんロジャーズ氏はGoogle、Apple、Facebook、Amazonの素晴らしさを理解してはいますが、一貫してGAFAの株式を保有しないことを主張しています。
ロジャーズ氏の株式投資に対する姿勢は長期保有を基本とするため、これらの企業はモメンタム株(流行り株)にあたり、ポリシーに反するわけです。
短期的な上昇も懸念の一つで、急上昇している株は暴落する時も早く、リスクが高いので手を出すまいと考えているようです。
仮想通貨は買いか?
仮想通貨の価値は0になると予想しており、買わない
仮想通貨はブロックチェーンを基盤とした技術によって成り立ち、政府に支配されない通貨として人気を保ってきました。
非国籍な通貨であることが重要な点ですが、ロジャーズ氏によると仮想通貨もいずれは国や政府に支配されて、管理下におかれるという見解を持っています。
仮想通貨の存在意義が失われることになるため、その時には価値が0になるだろうと予想しています。
S&P500に投資しても儲からない時代がくる?
S&P500に投資しても、向こう20年は儲からない時代がやってくるだろう
上でも書いたように、アメリカ株は上がりすぎているとジムロジャーズ氏は考えているため、アメリカ株の全体的な指標であるS&P500に投資しても、利益につながる期待薄いと語っています。
同じようなインデックスに投資するなら日本株の方がマシと言及しています。
ESGやSDGs投資の流行をどう見ているか?
社会インパクト投資のトレンドに乗って投資しなければならないと考えている
CO2排出量を始め、環境問題に対する姿勢は国際的にも非常に厳しくなってきました。
コロナ禍で公衆衛生への意識が高まり、ますます持続可能な社会作りは注目されるでしょうし、ESGやSDGsなど、社会にインパクトを与える投資の注目度は一層高まると見て、ロジャーズ氏もトレンドに乗る姿勢を見せています。
一方で注意が必要なのは、投資の判断基準で優先すべきは利益を生み出す企業であるか否かであることは昔も今も変わらないので、儲けを生み出せない社会インパクト投資はダメという意識を持っているようです。
以上、本日はここまで。
それでは!
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