3月26日、金融業界で事件が起きました。
アルケゴス・キャピタル・マネジメントというアメリカの投資会社が保有する株式で大きな含み損が発生し、アルケゴスに資産運用を任せていた大手金融機関に多額の損失が出るというものです。
多くの金融機関が数百億円~数千億円ものダメージを受け、合計1兆円を超える目算です。
いったいアルケゴス問題とは何なのか?金融危機に発展する可能性があるのか?
このブログ記事でわかりやすく解説します!
野村HD 2000億円損失! アルケゴス騒動が勃発
アルケゴス問題勃発時の時系列
3/29(月) | 野村HDが、朝8時45分に「多額の損失が生じる可能性がある」と発表 → 後に約2200億円の評価損を計上 |
同上 | クレディ・スイスは、「1〜3月の業績に非常に大きく重大な影響を与える可能性がある」と発表 → 後に約5200億円の評価損を計上 |
3/30(火) | 三菱UFJ証券HDが、約330億円の損失見込みと発表 |
野村証券の親会社である野村ホールディングスによる発表を皮切りに、クレディ・スイスや三菱UFJ証券が次々とアルケゴス問題による損失を発表しました。
世界の金融機関は合計1兆円以上の損失も
野村HDやクレディ・スイスの発表の後も被害に関する情報は後を絶たず、
- みずほフィナンシャルグループが約100億円の損失見込み
- 米国モルガン・スタンレーが1000億円の損失見込み
ここまで見えている損失を合計しても9000億円にのぼり、世界中の金融機関の情報を集めれば、1兆円は超えているものと思われます。
アルケゴス問題とは?
ここからは、アルケゴスショックについてわかりやすく解説します。
アルケゴスとはどんな会社なの?
まずアルケゴスというのはアメリカの投資会社の名前です。
アルケゴスは、世界有数のヘッジファンド:タイガー・マネジメント出身のビル・フアン(Bill Hwang)氏が立ち上げた会社で、ファミリーオフィスという種類の投資運用業務を行っていました。
ファミリーオフィスとは?
ファミリーオフィスとは家族の資産を将来的に守ることを目的とした投資会社で、主に富裕層を対象顧客としており、安定・安全な資産運用が求められます。
利益追求型の投資会社に比べると運用の特性を加味してファミリーオフィスに対する規制は緩く設定されていました。
厳しい規制を逃れたいヘッジファンドなどが制度上の緩さを悪用するため、相次いで新会社をファミリーオフィスで設立するという本末転倒の動きが起きました。
規制逃れのためにファミリーオフィス化したヘッジファンドは安定的な運用という本来の意義を忘れてしまい、ハイリスク・ハイリターンを追求する会社が後を絶ちませんでした。
アルケゴスも金融機関からも投資資金を引き出し、トータルリターンスワップというハイリスクな投資手法を用いた株式売買をしていました。
トータルリターンスワップとは?
トータルリターンスワップがややこしい仕組みなので、図解を交えてわかりやすく解説します。
まずは下図をご覧ください。
順を追って解説すると・・・
- 投資家(野村HD等の金融機関)が投資銀行(アルケゴス)に代わり株式を購入する
- アルケゴスだけでなく金融機関の資金も流入するため、何倍もレバレッジがかかる
- 金融機関は株式等の損益(売買損益や配当収入)をアルケゴスに渡す
- アルケゴスは金融機関へ金利手数料を支払う
儲けの仕組みをかいつまんで説明すると、
● 投資銀行(アルケゴス側)は株式投資の結果から収益を得る
● 投資家(金融機関側)は購入資金に相当する金利収入を得る
ぱっと見た感じどちらも儲かりそうに見えますが、アルケゴス側は株式投資の結果に損益を左右されるため、株価が下落した場合にアルケゴス側が損失を全て被ることになります。
レバレッジがかかっていることもふまえると、アルケゴスにとって大儲けする可能性がありつつ、リスクも高い仕組み商品でした。
なぜ金融機関に損失が生じたのか?
アルケゴスが経営危機に陥った理由はご想像の通りで、投資対象の株価が下落したことで、トータルリターンスワップの損失を被ってしまったからです。
一方で金融機関には損失が出ない仕組みなのに、なぜクレディ・スイスや野村HDを始めとした金融機関が合計1兆円を超える損失が出ようとしているのでしょうか?
運用成績が悪化したことを受け、金融機関がアルケゴスに対して追加担保(証拠金)を求めましたが、アルケゴスは資金が底をついてこれに応じられませんでした。
そこでアルケゴスの経営危機をいち早く察知したゴールドマンサックス等の一部の金融機関が動き始め、トータルリターンスワップで組み入れていた株式を一気に売却してしまったのです。
投資対象の株価はさらに下落してしまうため、ゴールドマンのように一抜けできた金融機関はよかったのですが、野村HDのように逃げ遅れた会社も多数あったわけです。
いち早くアルケゴスの保有株を売った企業
ゴールドマン・サックス | 3月26日以降に総額で105億ドル(約1兆1500億円)の株を売却 |
モルガン・スタンレー | ディスカバリー、バイドゥ、跟誰学などの株で約130億ドル分の売却を実施。3月29日、米ロケットカンパニーズの株を約5億ドル(約550億円)売却 |
ウェルズ・ファーゴ | 3月29日、総額21億4000万ドル分の株売却を実施 |
何が本当の問題だったのか?
アルケゴス問題を引き起こしたトータルリターンスワップは、お金の流れこそ複雑なものの、所詮はレバレッジをきかせた株式投資なので、投資先はシンプルです。
アルケゴスが絡むトータルリターンスワップで選ばれた株式の価値が下落したことが、本件の問題の本質です。
問題を引き起こしたアルケゴス銘柄とは?
今回の問題を引き起こしたのは、バイアコムCBSの株価急落であったとする説が有力です。
3月下旬に100ドルの高値をつけた矢先、バイアコムCBS社が増資を発表しました。
このニュースが引き金となり、株式の希薄化による価値下落の懸念があがり、1週間も経たないうちに半分以下の40ドル台まで株価は下落しました。
アルケゴスのポートフォリオは多大な含み損を抱え、レバレッジ取引を継続するための追加資金を迫られるも払えなくなったのでしょう。
アルケゴス問題は金融危機に発展するか?
金融機関の巨額損失というニュースを聞くと、筆者のようなアラフォー世代はサブプライムローンが引き起こした2008年の金融危機を思い出してしまいますよね。
アルケゴス問題は金融危機に発展するのでしょうか?
2008年の金融危機と比較してみる
サブプライムローン問題の象徴的な出来事と言えばリーマンショックです。
アメリカの大手投資会社であるリーマンブラザーズ社が破綻したことで、既に下落中だった株価がさらに加速して大暴落につながりました。
なおリーマンブラザーズ破綻時の負債総額は64兆円と言われています。
アルケゴス社の負債は詳細は明らかになってませんが、およそ10兆円前後と言われています。
リーマンに比べれば負債は6分の1程度ですし、2008年当時に比べて通貨の総量は莫大に増えている(通貨の価値が下がっている)ため、あの時と比べて
バイアコムCBSの株価下落が金融危機をもたらすか?
影響は軽微で金融危機などの大事は起きないと予想されています。
ただし注意が必要な点もあります。
下図のとおり、アメリカで株式の信用残高が急増しています。
(図:米国金融業規制機構(FINRA)の資料)
赤線で示しているとおり、2020年以降の前年同月比の信用買残高は激増しており、2000年のITバブルや2007年のサブプライムローン問題を思いおこさせる水準感です。
信用残が増えるということは、アルケゴスのように身の丈に合わないほど株式投資をしてしまい、ちょっとした株価急落で多くの負債を抱えて破綻する会社があらわれることにつなります。
過去から学ぶなら、この水準はバブル崩壊のサインともなるので、今後も注意深く見守ります。
株式投資のリスクが恐い人におすすめの貸付投資
アルケゴス問題のように、株式投資には一気に投資元本が吹き飛んでしまうリスクがあるのは否定しようがない事実です。
そんなリスクが恐い人向けに、利回り2~6%くらいで安定的に資産を増やせる投資商品:Funds(ファンズ)をご紹介します。
Fundsとは?
ファンズはお金を借りたい法人と個人投資家をつなぐ商品です。
資金需要者(借り手)は3ヶ月~12ヶ月程度の借入期間の経過後に元本+利息(分配金)を投資家へ支払います。
利息は2%~6%と株式投資ほどではないのですが、しっかり利益を得ることが可能です。
お金の借り手はどんな会社?
Fundsでお金を借りている企業は、基本的に上場企業、もしくは非上場であっても成長している有名な会社ばかりです。
これまでの実例をあげると・・・
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こういった企業が利回り2%~6%でお金を借りるということで投資家の信頼も高く、案件が売り出されると即完売になるほど人気です。
ワールドビジネスサテライトでも特集
テレビ東京の人気番組でも取り上げられ、業界内外で評判が高まってきており、筆者にとって近年で最注目の投資商品です。
もし興味を持たれたなら、ファンズのホームページで詳細を調べてみてはいかがでしょうか。
【Fundsとは?のまとめ記事はこちら】
以上、本日はここまで。
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