2016年初回の投稿で書いた通り、投資の世界では、全世界的に大混乱の開幕となりました。
1月4日、東京株式市場で582円の大幅安(-3%)を付け、あれよあれよというまに、日経平均株価は2,000円以上も暴落、16,000円台を付けました。
そんな混乱の中、ひときわ大混乱となったのが中国・上海総合市場です。1月4日終値で242ポイント安、-6.9%もの下落幅となり、中国・上海総合市場初のサーキットブレーカーが発動されました。その後も上海の株価は下落を続けています。
年始からのこの混乱を受け、前回の投稿では日本株式市場の現状、今後の動向を分析しました。
今回の投稿では、改めて全世界的な金融市場の今後を分析したいと思います。
金融危機が訪れる可能性は?
近い将来、金融危機が訪れる可能性はあるのでしょうか?
一時的な株価下落でなく、本当の意味で危機的状況に陥るには、シンボリックな出来事が起きる必要があります。
直近の2007年~2008年の金融危機は、サブプライムローンの焦げ付き、その後のリーマンブラザーズの破たんがシンボリックな出来事にあたります。
また1997年~1998年の金融危機は、米国のヘッジファンドを主とした機関投資家によるアジア通貨の空売り→東アジア、東南アジアの各国通貨の暴落がシンボリックな出来事です。
では、2016年以降の金融危機は何がシンボリックな存在になるのでしょうか?ギリシャショックも一段落した今、はっきりした姿は見えません。
何か手掛かりとなる情報がないか探したところ、中国経済とアメリカ経済への懸念に関する記事をご紹介します。どちらも株価暴落の決定的な契機まで及ばないため、参考程度にお読みください。
ルチル・シャルマ氏(Ruchir Sharma)の懸念
彼は「世界の頭脳100人」にも選ばれたという天才的な頭脳を持ったインドの投資家です。現在は、モルガン・スタンレーの投資マネージャーを務めています。著書もいくつか出している著名な投資家です。
ルチル・シャルマの警告は以下のようなものです。はっきりと、中国発の金融危機への懸念を表明しています。
われわれは、今まさに、世界的な景気下降から放たれた大きな衝撃を受けている。そして、次の衝撃は、どう見ても中国から始まりそうだ。
中国は、巨額負債の重圧、過度の投資と人口減少が複合的に作用して、経済成長を徐々にむしばんでいる。
CNBCの10の懸念
アメリカのビジネスニュース専門放送局:CNBCは、米市場における2016年の「10の懸念」を取り上げています。
ここで語られているのは、米国経済の不調とは言えないまでも決して好調ではない姿が映し出されています。
1. 海運価格と世界の商品需要の指標、バルチック(・ドライ)海運指数が1985年来の低水準になっている。世界の貿易が縮小していることを示している。
2. 世界の商品価格がリーマンショック後の安値水準にある。
3. 米連銀が利上げに踏み切った過去7回の時点の名目GDPは5%~7%増の間だった。前回2004年第2四半期は6.6%増だった。2015年第3四半期の名目GDPは2.7%でしかない。
4. 売上が落ち、在庫が増えている。これは景気後退の前兆だ。
5. 米国債の利回り曲線がフラット化している。短期が利上げを織り込み、長期的なインフレ懸念がないからだ。短期調達・長期運用の銀行の利ザヤが減るため、貸し出しに消極的になる。景気後退の懸念となる。
6. 企業が自社株買いなどにより、1株利益を膨らませている。実際の利益は減っている。
7. ドル高が多国籍企業の利益を蝕んでいる。
8. 製造業はすでに景気後退入りしている。
9. 信用リスク・プレミアムが広がっている。
10. S&P500のPERが過去2番目に高い。
出典:10 warning signs for investors in 2016 – CNBC
7年周期の金融危機説
続いて金融危機が起きる可能性を示唆する「投資の周期」について書きたいと思います。
株式やFX為替の相場には「7年周期」というものが、まことしやかに言われています。7年ごとに大規模な経済クラッシュが起こり、株価の大幅下落が起きるというものです。本当に7年ごとに起きているのか?以下の年表を見てください。
1973年:スミソニアン体制崩壊→先進各国、変動為替相場へ移行
1980年:S&L(貯蓄貸付組合)危機
1987年:ブラックマンデー
1994年:メキシコ通貨危機
2001年:9・11事件とその後の株価暴落、ITバブル崩壊
2008年:リーマンショック
2015年:チャイナショック??
どうですか?私は7年説に少し違和感を覚えました。
2008年や2001年に起きた金融危機の規模の大きさ、世界経済に与えた影響と比較すると、2015年のチャイナショックは取るに足らないほどのインパクトでした。とは言っても勘違いしないでほしいのが、2015年の中国経済の落ち込みはそれほど大きくはなかったということです。本当に中国経済が崩壊に向かったら、そのインパクトは計り知れないほど大きいと考えてます。
いずれにせよ、2015年は7年周期の金融危機説が回避されたと言えます。
10年周期の金融危機説
先ほどの7年周期に加え、金融の世界では10年周期の危機が話題になることもあります。
10年周期の金融危機とは、1980年代以降、末尾に7が付く年に金融危機が起きていることを指します。以下の年表を見てください。
1987年:ブラックマンデー
1997年:アジア通貨危機
2007年:サブプライム問題の発生(BNPバリパ等)
2017年:??
確かにこうして見ると、10年周期で金融市場は危機的な状況に陥ってきました。このサイクルに従うと、「2017年に何かが起きる?」と考えられ、2016年はそのきっかけが始まる年になるかもしれません。
10年周期の金融危機が発生した背景として常にあるのが、米国の金融政策の緩和から引き締めへの転換です。金融政策が転換されることで、金融市場から投資資金が逃げ出したことが引き金になり、世界的に株価が下落してしまいました。
2015年12月、米国はリーマンショック以来初の金利引き上げ、つまり金融政策の引き締めが行われました。これが10年周期の金融危機の始まりかもしれませんね。
以上、本日はここまで。
今回は金融危機発生のトリガーとなるものを手探りに書き綴りましたが、決定打となる情報は見つかりませんでした。そんな中でも、私見では中国経済と10年周期の金融危機が大きな影響を及ぼしそうな気がしました。
次回は、もし金融危機が起きたら株価はどうなるか?をシミュレーションしてみたいと思います。
それでは!
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