このブログ読者さんから、「ソーシャルレンディングと税金」をテーマに解説記事を書いて欲しいと要望をいただきました。
過去に「副業と税金」や「ロボアドバイザーと税金」という観点では書いたことがありましたが、ソーシャルレンディングと税金は新しい試みです。
他の投資商品と考え方がかなり異なるため、勘違いして税金未納の投資家がたくさんいるのでは?と思ってます。
他のブログでも同じテーマで記事を書かれてますが、どこよりも丁寧にソーシャルレンディングと税金を解説したいと思います。
【税金に関する過去の記事】 |
お問い合わせ内容
今回、「ペンネーム:恋するうさぎちゃん」(って古い?)から頂いたお問い合わせのメッセージは以下の通りです。
質問者も概ね理解されているようですが、体系的に話を整理していきたいと思います。
いつも参考にさせて頂いております。
質問と言うか要望なのですが、ソーシャルレンディングは非常に魅力的な投資で私も利用しているのですが、税金の部分で不利だなあと悩んでいます。
と言うのも株やFX投信やロボアドバイザー等は税金がニーサで買えるものは非課税だし、FXや ロボアド何かも20%強が源泉されるだけですが、ソーシャルレンディングだと源泉徴収後にさらに所得税がかかるケースがありますよね?
しかも、所得が上がることで所得税率も上がるリスクある。その辺の税金面でもブログで触れて頂いけるとありがたいです。
匿名希望より
※内容が変わらない範囲で文章補正してます
ソーシャルレンディングは確定申告が必要か?
税務署に所得税や住民税に関わる所得内容を個人で申告する行為を確定申告といいます。
ソーシャルレンディングから得る分配金等の利益はもちろん所得ですが、確定申告が必要なケースと不要なケースがあります。
確定申告が必要なケース
確定申告が必要なケースを簡潔に説明すると・・・
主な収入源となる給与や年金以外で、ソーシャルレンディングとその他所得の合計が20万円を超えたら確定申告をしましょう |
上記のようになり、もう少し詳しく説明すると以下の条件に該当すれば確定申告が必要です。
|
要するに、ソーシャルレンディングで得た利益が1年間で20万円を超えたら確定申告が必要ということです。
またソーシャルレンディングの利益が20万円を超えない場合であっても、その他の所得と合算して20万円を超えないか?をチェックして超えるようであれば、やはり確定申告が必要です。
ちなみに「その他の所得」とは、以下のようなものを指します。
【その他の所得ってなに?】
※特定口座やNISA口座で得た利益は、原則、確定申告をする必要はありません |
ソーシャルレンディングに経費は認められる?
ソーシャルレンディング投資のためにかけたコストは経費として計上でき、税金対象の所得を減らす(相殺)ことができます。
例えばソーシャルレンディングの分配金を30万円得て、そのために5万円の経費がかかったのたならば、30万円ー5万円=25万円が税金計算の対象になるわけです。
なおソーシャルレンディング経費の候補として、以下のようなものが考えられます。
- ソーシャルレンディング口座への振込手数料
- セミナー参加費、及び交通費
- ソーシャルレンディングに関する書籍・・・等
経費に計上したい場合は領収書などの証跡を確定申告時のみならず、その後も大切に保管しておく必要があります。
ここまでの解説で、個人が確定申告で税金を納める必要があるケースについてご理解いただけましたか?
次に気になるのは、確定申告でいくら税金を支払う必要があるか?という金額です。
ソーシャルレンディング収益にかかる税金の計算方法
ここからは具体的な税金の計算方法について解説します。
ソーシャルレンディングの課税方式は総合課税
税金の計算を考える際、2種類の課税方式があります。
- 総合課税
他の総合課税に相当する所得と合算して税金を計算する方式で、給与所得がこちらに該当する - 分離課税
それぞれの所得ごとに税金を計算する方式で、株式やFXの売却益がこちらに該当する
ソーシャルレンディングは「1.総合課税」に該当し、給与所得を含む他の総合課税所得と合算して税金計算することになります。
【分離課税と総合課税のイメージ図】
|
税率はいくら?
ソーシャルレンディングは給与所得等の総合課税所得と合算した上で税金を計算します。
では計算方法は?というと、以下の累進課税の税率表を使って計算します。
課税される所得金額 | 税率 |
---|---|
195万円以下 | 5% |
195万円を超え330万円以下 | 10% |
330万円を超え695万円以下 | 20% |
695万円を超え900万円以下 | 23% |
900万円を超え1,800万円以下 | 33% |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% |
4,000万円超 | 45% |
(引用元:国税庁のHP)
ここで注意が必要なのは、「合計所得額×税率と計算したら間違い」ということです。
正しい計算方法は、「区分から超過した金額に対応した税率を乗じる」となります。
言葉だと分かりづらいので、具体的な例を用いてみましょう。
【前提条件】 所得400万円で、且つ給与以外の収入が20万円を超えるケース 内訳は・・・
|
上記の例の場合、所得税は以下の通り計算します。
【所得税の計算方法】 課税される所得金額195万円以下には税率5%が適用 課税される所得金額195万円超~330万円以下、すなわち所得400万円の例では135万円分には税率10%が適用 課税される所得金額330万円超~695万円以下、すなわち所得400万円の例では70万円分には税率20%が適用 以上の内容を計算すると、37.25万円の所得税を納める必要があることが分かります (195万円×5%)+(135万円×10%)+(70万円×20%)=37.25万円 |
所得税の正しい計算方法が理解できましたか?
しかし、誰もが累進課税の税率ごとに分けて計算するのって面倒だと思いますよね。
そこで所得税の速算表の「控除額」を利用すれば、もっと簡便に計算することも可能です。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
上表の控除額を使えば、所得金額×所得の最高税率の単純な計算から所得税額を求めることができます。
【所得税の簡便な計算方法】 所得税額×最高税率ー控除額 400万円×20%-42.75万円=37.25万円 |
累進課税制度に対する誤解
話は少しそれますが、
時々、「税率区分の境目の所得金額では所得が多い人の方が手取りが低くなると」主張される人がいますが、ここまでの説明でこの理論は勘違いであることが分かります。
このように主張する人の頭の中は、きっと「所得330万円だと税率が10%で、所得340万円×だと税率が20%だから、所得330万円の方が手取りは多くなる」となってるのでしょう。
しかし上の例でも確認した通りで、正しい計算方法は「区分から超過した金額に対応した税率を乗じる」なわけですから、所得が高い人が手取りも多くなります。
ということで、みなさん安心して給与やソーシャルレンディングでしっかり稼いで額面金額を増やしましょう。
計算結果は全て納税が必要?
所得税が計算できたところで、次に疑問に思うのは、この計算結果を全て確定申告で納税する必要があるのか?という点です。
答えはノーです。
その理由は、既に納税を済ませてしまっているお金があるからです。
サラリーマンの給与であれば、会社が毎月の給料から代理で納税してくれます。
ソーシャルレンディングも、分配金に対して一律で20%(2037年までは復興特別所得税がかかるため20.42%)をソーシャルレンディング事業者が源泉徴収し、下図の通り投資家の代理で国に納税してくれます。
(引用 http://social-lending-ranking.com/tax)
つまり確定申告で納めるべきは、
”計算結果に対して、既に代理で納税された金額を差引いたもの”
となります。
ソーシャルレンディングの所得税で補足をすると、ソーシャルレンディングの源泉徴収税率は約20%に設定されてます。
しかし本来の所得税率は所得に応じて変わるため、確定申告の結果で所得税の追加納付、もしくは還付金が戻ってくることになります。
ちなみにサラリーマンの給与は確定申告をしないのはなぜ?
一般のサラリーマンであれば、所得の申告と納税を会社が代理で会社が行ってくれるので、個人が確定申告を行う必要はありません。
しかし副業など給与以外で所得がある場合、確定申告が必要になるケースがあります。
また住宅ローン減税など特例を受ける場合も、やはり個人で確定申告を行う必要があります。
今回の論点であるソーシャルレンディングで得る利益は副業のようなものなので、確定申告が必要なケースがあるという結論になるわけです。
ソーシャルレンディングと住民税の関係
納税という観点で、もう一つ大切なこととして住民税があげられます。
ソーシャルレンディングであげた収益と住民税の関係はどうなっているでしょうか?
住民税の申告義務
ソーシャルレンディングで分配金を得た人は、基本的に全員が住民税の申告義務があります。
住民税は確定申告とは別物の話であり、ソーシャルレンディングを含む給与以外の雑所得等の合計額が20万円以下のため確定申告をしないこととした場合であっても、住民税の申告は必要なのです。
一方で確定申告をした人は、所得税とともに住民税に関する手続きもできるため、個別に住民税の申告を行う必要はありません
住民税の申告をしないとバレるのか?
給与以外の所得が20万円以下の場合に住民税を申告しない場合にバレるのか?と言うと、バレたという話をほとんど聞きません。
わたしも何度か・・・
とはいえ、所得のデータ自体は全て市区町村にも提供されますので、バレる可能性は十分にあります。
住民税の無申告がバレた場合、超過期間分の罰金が科せられることがあります。
住民税は確定申告、もしくは個別に申告を行いましょう。
ソーシャルレンディングと税金のまとめ
今回の投稿をまとめます。
- ソーシャルレンディングの分配金を含むその他所得の合計金額が20万円超の場合、確定申告が必要
- ソーシャルレンディングの所得税は、給与所得などと合算したうえで累進課税税率を使って計算される
- ソーシャルレンディングの分配金は約20%源泉徴収されているが、本来の税率とは異なるため、確定申告の結果で追加納税、もしくは還付金をもらうことになる
- 住民税は、その他の所得が20万円以下であっても申告が必須
- 確定申告を行えば所得税に合わせて住民税も申告できるが、確定申告を行わなければ、住民税を個別申告する必要がある。
以上、本日はここまで。
それでは!
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