私はお金の情報誌:ZAIが大好きで、愛読書の一つです。
先日ZAIを読んでいたところ、「かぶ1000」さんという個人投資家が40万円の元手を2億5,000万円にまで増やしたという記事が目にとまりました。
その「かぶ1000」さんが2億円以上の資産を築いた具体的な投資方法として、“バリュー投資の父”として知られる米国の有名投資家ベンジャミン・グレアムが提唱する「ネットネット株」を使っていると書かれていました。
なんだかふざけたネーミングのネットネット株ですが、いったいどんな投資方法なのでしょうか?
ベンジャミン・グレアムとは
ベンジャミン・グレアム(Benjamin Graham, 1894年5月8日 – 1976年9月21日)は、アメリカの経済学者です。
「バリュー投資の父」「ウォール・ストリートの最長老」といった愛称で今でもよく引用されるプロの投資家でした。
また、投資家の賢人:ウォーレン・バフェットの育ての親としてもグレアム氏は知られています。
グレアムにとってバフェットはコロンビア大学での教え子の一人で、他にもグレアムの生徒で著名な投資家としてはウィリアム・ルアーン、アービィング・カーン、ウォルター・シュロス、チャールズ・ブランデスがいるそうです。
バフェットはグレアムが持つ投資への考え方を信頼していて、グレアムを父親に次いで影響力のある人物であると語っています。
グレアムの投資の基本はバリュー株であり、その考えはバフェットの投資法と通じるところがあります。
そしてグレアムのバリュー投資法のなかに「ネットネット株」というものがあり、雑誌:ZAIに登場した「かぶ1000」さんはこの手法を応用したと語っています。
ネットネット株とは
グレアムが言う「ネットネット株」とは、現金などの流動資産から負債総額を引いた額の3分の2が時価総額よりも多く、株価が割安と判断される銘柄のことを指します。
ネットネット株=(流動資産-総負債)×66.7%>時価総額
ネットネット株はその企業が持つ資産に対して株価が大きく下回っているため、株価の安全域が大きく下落リスクも低い事から、非常に有効な投資手法として多くの投資家が活用しています。
「かぶ1000」さんのネットネット株の応用
「かぶ1000」さんはグレアムのネットネット株を独自の応用型で使っています。
正味流動資産に在庫評価額を入れず、有価証券を含んだ額から貸倒引当金や負債合計を引いた額が、時価総額よりも多ければ割安とみなしています
具体的に数字を用いてネットネット株を見てみましょう。
ネットネット株の例:日本精糖(2117)
ZAIに記載されていたネットネット株の一例として、日本精糖(2117)の2012年3月期決算があげられます。
下図は決算書の一部で、赤字が足し合わせる要素、青字が引く要素となります。
(出典:Zai Online)
一通り足す要素と引く要素を整理していくと、下図のようになりました。
2012年3月期決算時点では、日本精糖の株はネットネット株であったということが言えます。
しかし実際に投資をする際、「かぶ1000」さんはネットネット株だから必ず投資に値するというわけではなく、他の指標(収益性だったり、話題性だったり)も加味したうえで最終判断するそうです。
(出典:Zai Online)
ネットネット株を探してみた(2016年9月)
ここまでグレアムのネットネット株や「かぶ1000」さんのネットネット株について見てきました。
面白そうなので、私もネットネット株を探してみることにしました。今回は「かぶ1000」さんのアレンジしたネットネット株の算出方法を用います。
当てずっぽうに銘柄を計算してもラチが明かないので、まず楽天証券のスーパーサーチ機能を使って、資産リッチな割安株をスクリーニングすることにしました。
スクリーニング条件
PBR:1倍以下
PER:15倍以下
予想配当利回り:3%以上
配当利回りは割安株と関係ありませんが、配当が多い方が投資するうえで嬉しいかなと思って、条件に入れました。
スクリーニング結果
上記条件でスクリーニングした結果、10数柄ほどが抽出されてきました。
とりあえず上から順番にネットネット株の計算を進めたところ、わずか2銘柄目でネットネット株を発見しました!!
下表の通り、ユアテック社の正味流動資産が時価総額を大きく上回ったのです!
(単位:千円)
日本ドライケミカル | ユアテック | |
流動資産 | ||
現金及び預金 | 1,360,950 | 31,993,000 |
受取手形、売掛金及び完成工事未収入金 | 14,095,444 | 88,538,000 |
(流動資産の)貸倒引当金 | -4,940 | -167,000 |
その他資産 | ||
投資有価証券 | 868,051 | 9,229,000 |
(その他資産の)貸倒引当金 | -15,923 | -412,000 |
流動負債 | ||
流動負債合計 | -12,467,987 | -66,400,000 |
判定 | ||
正味流動資産 | 3,835,595 | 62,781,000 |
時価総額 | 8,160,070 | 42,724,000 |
最終判定 | × | ○ |
※各数値は最新の決算資料から、時価総額は2016年9月18日時点の株価から算出
ネットネット株を見つけたので、さっそくユアテックに投資だ!・・・といくのでしょうか。
冷静になって、直近の株価推移を見てみました。
ユアテックの株価チャート
下図の通り、ユアテック社の直近3カ月の株価は悲惨なことになっていて、30%~40%も下落しています。
原因を調べたところ、太陽光発電関連の事業がうまくいかず、業績が低迷しているようです。
私も最近の投稿で多くの太陽光発電関連の企業が倒産に追い込まれていることを書いたばかりなので、思い当たるふしが・・・。
日本ドライケミカルの株価チャート
ちなみにユアテックの前に計算してネットネット株でなかった日本ドライケミカル社の株価チャートは下図の通りです。
こっちは株価が明らかに絶好調といった感じです。
ネットネット株の株価は不振で、ネットネット株でない株価は好調。やっぱり世の中うまい話ってそんなにないものだと痛感した次第です。
【ネットネット株の効率的な探し方に関する記事はこちら】
以上、本日はここまで。
今回は株式投資界の巨匠ベンジャミン・グレアム氏と「かぶ1000」さんのネットネット株について書きました。
ネットネット株の計算は決算書を開く必要があるため面倒ですが、計算式自体はとてもシンプルなので、根気強く続けていれば、きっと良い投資先が見つかると思います。
私も継続してチャレンジしたいと思います。
それでは!
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