前回の投稿に引き続き、山﨑元さんの著書「難しいことは分かりませんが、お金の増やし方を教えてください!」に対する書評2回目の投稿です。
前回の投稿では、この本で書かれている概要をご紹介しました。
山﨑元さんが 「難しいことは分かりませんが、お金の増やし方を教えてください!」で主張していることをまとめると、おおよそ以下のような内容になります。
●確実に安全に保有したいお金を日本国債で運用する
●国債である程度の資金を確保したら、余ったお金で増やすための投資を行う
●投資はNISAや確定拠出年金といったお得な制度を活用する
●投資は手数料が安いインデックス投信を選択するの
これを受け、今回の投稿では上記論点についていくつか物申させていただきます。
「難しいことは分かりませんが、お金の増やし方を教えてください」の書評
ここからが書評の本論となります
完全に私の主義・主張ですので、多分に個人的価値観が含まれます。ご参考程度に読んでくださると幸いです。
定期預金より日本国債をお勧めすることは間違い
山崎さんは著書の中で資産を安全に保有しつつ、且つ少しばかりの運用益を上げる方法として、日本国債の保有をおすすめしています。
国債の比較商品として銀行の定期預金もあげられていますが、国家が保証する投資商品の方が安全度が高いというのがその理由です。
この点について、私は安全性と収益性の両面から疑問を述べさせていただきます。
定期預金の方が利回りが高い
まず収益性ですが、定期預金の方が利回りが高い商品がたくさんあることは既成事実です。
以前このブログでも投稿した通り、2016年8月現在で定期預金の金利が高い銀行で0.2%前後である一方で日本国債は0.05%となっており、約4倍の差がついていることが分かります。
収益性の観点では、定期預金の方が利率が高いということが一目瞭然です。
安全性が「国債 > 定期預金」の評価者に欠ける視点
国家と銀行と、どちらの方が破たんするリスクが高いですか?と聞かれて、以前は私も間違いなく銀行の方がリスクが高いと答えていたでしょうが、ギリシャなどの例を見ていると、国家が最後まで残ると簡単には言えないかと思うようになってきました。
また仮に国家の方が破たんしづらいというのが真実としても、だからといって国債の方が安全だというのも、銀行預金の安全性を考える際の大切な視点が抜け落ちていると思います。
その大切な視点とは銀行預金者に対するセーフティーネットです。
銀行が破たんした場合、通常は預金者の資産を保護する仕組み:セーフティーネットが存在します。日本では銀行破たん時のセーフティーネットとして、預金者一人当たり上限1,000万円までは守ってもらえるという仕組みがあります。
つまり銀行が破たんしても、定期預金1,000万円までは常に安全ということです。また1,000万円以上の定期預金を組みたい場合は、銀行を分散すれば良いのでは?と私は思うわけです。
逆に預金額1,000万円以内でもセーフティーネットが機能しない場合を考えると、それは国家が破たんする局面ではないでしょうか。
以上のことから、私が思うに安全性では国債≒定期預金(1銀行あたり1,000万円まで)となり、収益性で上回る定期預金の方が安全に資産を保有する場所として適していると考えます。
確定拠出年金は元本毀損の恐れがある
確定拠出年金制度を使って投資信託の運用を行えば、税金メリットが多く享受できる点は、確かにこの本に書かれている通りです。
しかし、確定拠出年金で商品を購入した銀行等の金融機関が破綻した場合に元本が毀損するリスクがあります。
確定拠出年金制度で運用に利用していた銀行が破たんした場合、手元で持っている定期預金等と合計で1000万円までの元本と利息が預金保険機構により保証されるものの、それを超えた部分は破綻処理の中で保証割合が決まります。
優先順位は手元の銀行預金が先になるので、合計して1000万円以上預けていた場合、確定拠出制度の財産のほうが優先度が低くなり、元本が毀損することになります。
また運用に利用していた金融機関が生命保険会社や損害保険会社であった場合、保険会社の破たんは保険契約者保護機構が保証を行うため、90%の保証しかしてくれません。
銀行や生損保の破綻可能性はあまり高くありませんが、金融機関の破綻に際しては必ずしも保証されないわけで、確定拠出年金制度で運用する際の金融機関選びはとても大切なのです。
以上、本日はここまで。
「難しいことは分かりませんが、お金の増やし方を教えてください!」に対する批評として、日本国債 VS 定期預金と確定拠出年金制度のリスクについて物申させていただきました。
本当は生命保険に対する考え方など他にもいくつか指摘したいことはあったのですが、ネガティブなことばかり言ってもちょっと気持ちが萎えてくるので、優先度の高い2つのポイントについて書きました。
全般を通じて、資産運用について「難しいことは分からない」人が読むには適した本だと思いますが、自分でいろいろ考えて資産運用している人が読むには物足りないでしょう。
それでは!
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